大野一雄について
川口隆夫 ソロダンスパフォーマンス








大野一雄の残された公演ビデオから、
川口隆夫が動きだけを"完全コピー"し、
ダンサーとしての大野一雄を再現する試み。

土方巽演出による大野一雄の舞台より3作品、
 1977年 ラ・アルヘンチーナ頌
 1981年 私のお母さん
 1985年 死海

そして1969年 映画「O氏の肖像」を模写する。

観る者はそこに生前の大野の面影を重ね、
大野を知らない者もまた、そこに大野の踊りを想像し重ねる。

川口隆夫による大野一雄について。


photo Naoto Iina





























私は大野一雄の生前の舞台を見たことがない。最近写真やビデオでその踊りを見る機会があり、とても美しいと思った。うまく説明できないが、彼の体の動きのうねりやしなりに親近感を覚える。不遜にもどこかしらなにかしら自分と似ているところがあるんじゃないだろうか。私の中の官能のようなものを刺激してくる。それに身を委ねてみようと思った。

戦後の日本モダンダンス界のスターでありながらも、異色とも言える作品を多数発表。土方巽との出会い、その化学反応の中で舞踏を生んだ。その後しばらく舞台活動に距離を置きながら、長野千秋監督と『O氏の肖像』を始めとする3本の映画を製作したのち、1977年、齢72歳にして『ラ・アルヘンチーナ頌』で華々しくカムバックデビュー。世界各地を巡演して舞踏の名を広く知らしめ、2010年、103歳にて他界するまで踊り続けた。
土方は「ひとさじで痺れさす劇薬のダンサー」と言い、人々は「魂の踊り」と評した大野一雄。

『大野一雄について』の中で、川口隆夫は大野一雄の初期の代表的な三作品(『ラ・アルヘンチーナ頌』、『わたしのお母さん』、『死海、幽霊、ウィンナーワルツ』)の初演のビデオ記録をもとにいくつかのシーンの踊りをコピーし、再現を試みます。



即興的な要素も含み、老齢というだけでなく特異な身体的・運動的特徴や癖までをもその本質として含んだ大野の踊り。そこに足すも引くもなく、忠実にコピーしようと努めることは、コピーを行う主体側の解釈や特性を消して、可能な限りその対象に自分を重ねようとすることに他なりません。しかし、重ねよう、寄せようとすればするほど、その重ならない部分、どうしてもはみ出してしまう部分が、逆に、その主体の存在の消すことのできない有り様を浮かび上がらせるとう、「コピー」であるがゆえに「オリジナル」であるという、パラドックス。

観る者はそこに生前の大野の面影を重ね、大野を知らない者もまた、そこに大野の踊りを想像し重ねます。そうして複数の像が交互に前に出あるいは後退する。『大野一雄について』は、今は亡き大野一雄との、幻のデュエットを踊る作品です。

故人の輝かしい業績や力に比すべくもなく、その内奥を照らす光も持ち合わせませんが、せめて鋳型に鉄を流し込むようにその踊りの中に自分の流し込むことによって、いくらかなりともその<劇薬>に舌を痺れさすことができればと思います。

川口隆夫







コンセプト・演出・出演: 川口隆夫
振付: 土方 巽 大野一雄
ドラマトゥルク・映像・サウンド: 飯名尚人
照明:溝端俊夫
衣装:北村教子
協力:大野一雄舞踏研究所 有限会社かんた
制作:溝端俊夫(有限会社かんた)














上演歴:
2013年8月 東京・d−倉庫 「ダンスがみたい!」フェスティバル初演
2013年10月 横浜・BankART Studio NYK 大野一雄フェスティバル
2015年2月 横浜・BankART Studio NYK 「Dance Archive Project 2015」
2015年9月7 - 8日 光州・韓国 Asia Culture Center Theatre
2015年9月19日 ミュンスター・ドイツ Theater Im Pumpenhaus
2015年9月22日 ザグレブ・クロアチア Pogon Jedinstvo
2015年11月28日 京都・日本 京都芸術劇場・春秋座「ダンスの創造的行為をめぐって」
2016年5月14 - 19日 ブリュッセル/ベルギー クンステン・フェスティバル・デザール Dynastiegebouw / Bâtiment Dynastie
2016年5月21日 ビルバオ/スペイン アルオンディガ・ビルバオ AZkuna Zentroa Auditorio
2016年6月1日 - 2日 リスボン/ポルトガル アルカンタラ・フェスティバル サンルイス市立劇場
2016年8月15日 第8回アートサミット・インドネシア ジャカルタ劇場
2016年8月18日 ジョグジャカルタ・インドネシア ジョグジャナショナルミュージアム
2016年9月-10月 北米7都市ツアー / ジャパン・ソサエティ(ニューヨーク)、セカンドワード・ファンデーション(ハドソン)、フリンセンター(ヴァーモント)、アイオワ大学(アイオワ)、マサチューセッツ大学アマースト校(マサチューセッツ)、REDCAT(ロサンゼルス)、アンディウォーホル美術館(ピッツバーグ)
2017年1月4 - 5日 フランス・ノルマンディー カーン国立振付センター
2017年2月4日 スペイン・サンティエゴ FESTIVAL DE INVERNO DE TEATRO, DANZA E ARTE EN ACCIÓN
2017年2月25日 - 26日 オーストラリア・メルボルン Dancehouse



photo bozzo









































photo : naoto iina





















大野一雄

「ラ・アルヘンチーナ頌」ポスター 1977 写真:細江英公 デザイン:田中一光.jpg「ラ・アルヘンチーナ頌」ポスター 1977 写真:細江英公 デザイン:田中一光 大野一雄は1906年10月27日、函館の弁天町に生まれた。生家は北洋を漁場にする網元で、父はロシア語を話し、冬はカムチャッカまで漁に出た。母は西洋料理を得意とし、琴は六段の名手、オルガンも弾いた。母の弾くオルガンで兄弟たちは「庭の千草」を歌ったという。中学に入り、まもなく一雄は母方の秋田の親戚白石家にあずけられる。白石家には子供がいなかった。一雄は旧制大館中学では、陸上部に所属、400メートルの秋田県記録を更新した。
 1926年、日本体育会体操学校(現日本体育大学)に入学。在学中、貧乏学生だった一雄は、寄宿舎の寮長に伴われ、帝国劇場の三階席からラ・アルヘンチーナの公演を観た。アルヘンチーナは、「カスタネットの女王」とも呼ばれ、詩人ロルカも絶賛した20世紀のスペイン舞踊の革新者であった。一雄は、アルヘンチーナの舞踊に深い感銘を受けた。体操学校を卒業し、横浜のミッションスクール関東学院に体育教師として赴任する。大野一雄が踊りを始めた直接のきっかけは、その後捜真女学校に転任となったとき、体育の科目でダンスを教えなければならなくなったからだった。そこで、1933年に石井漠の門を叩き、さらに1936年には江口隆哉、宮操子の研究所に入った。しかし1938年に召集を受け、戦中の九年間は、中国、ニューギニアで従軍した。
 大野一雄の第一回現代舞踊公演は、1949年、東京の神田共立講堂で行われた。このとき43歳、これが最初のリサイタルだった。ニューギニアのマノクワリで終戦となり、1年間の捕虜生活のあと復員し、すぐに舞踊家としての活動を再開した。「クラゲの踊り」という踊りを50年代の公演のときに踊っている。ニューギニアから帰る航海の船上で、栄養失調や病気で亡くなったひとたちを水葬して見送った体験から、そのときの海に浮かぶクラゲの踊りを踊りたかったのだという。
 50年代の終わりに、土方巽と出会い、大野の踊りは大きな転機を迎える。二人の出会いは、「舞踏」、海外でも「BUTOH」として知られるスタイルを創造した。西洋の影響を強く受けたモダンダンスから、日本人の内面的な問題を扱う身体表現への転換であった。大野一雄がソロで踊り、土方巽が演出した「ラ・アルヘンチーナ頌」は、1977年に初演された。この作品は大野自身の代表作であり、また舞踏の代表作でもある。
 1980年に、フランスのナンシー国際演劇祭に招かれ、大野一雄は「ラ・アルヘンチーナ頌」を踊る。大野の独創的な表現は西欧の同時代の芸術家たちに衝撃をもって受け入れられることになった。これははじめての海外公演だったが、このあと、大野の70歳代、80歳代の活動は欧州、北米、中南米、アジア各国に広がり、また、世界中から多くの研究生が大野の稽古場に集まって来た。90歳を越えてなお第一線での活動は続いた。最後の海外公演は、1999年12月ニューヨーク、「20世紀への鎮魂」である。しかしこの年、目を患い、体力の衰えも顕著になった。そんな中、老いをダンスの糧とするかのように、大野一雄の踊りは続いている。一人で立って歩くことが出来なくなると、支えられて踊った。支えられても立てないときは、座ったまま踊った。足が不自由になると手だけで踊った。頭がもやもやするとひとりいざって、人はその背中を見て感動した。
 踊るとき、輝きを放つ存在になる。普通の老人が、人に力を与える存在に変貌する。そのような繰り返される事実が、大野一雄に対する関心を支えている。長く生きて、人を感動させる。大野一雄は、人間の可能性を拡げた芸術家だ。

(大野一雄舞踏研究所WEBサイトより転載)




大野一雄舞踏研究所

http://www.kazuoohnodancestudio.com/



































photo : naoto iina





プロフィール

コンセプト/出演
川口隆夫

1996年よりパフォーマンスグループ「ダムタイプ」に参加。並行して2000年よりソロ活動を開始。特に03年以降は「ダンスでも演劇でもない、 まさにパフォーマンスとしか言いようのない(朝日新聞・石井達朗氏)」作品を発表し続けている。
主な作品に『ディケノヴェス―見えないと言え』(03)、『D.D.D. ― 私の心臓はあと難解鼓動して止まるのか?』(04~07)、『グッド・ラック』(08~)、『TABLEMIND』(11).
08年からは「自分について語る」ソロパフォーマンス『a perfect life』シリーズを継続。13年にはその「vol.6 沖縄から東京へ」を東京都写真美術館「第5回恵比寿映像祭」で発表した。
近年は『病める舞姫をテキストに ― 2つのソロダンス』(12~)、『大野一雄について』(13~)など、舞踏についてのパフォーマンス作品を制作し、2014年から15年にかけて再演や東北ツアーを行う。
また、照明演出の藤本隆行(ダムタイプ)、ダンサーの白井剛とともに『true/本当のこと』(07~11)、『Node/砂漠の老人』(13)、香港のディック・ウォン、映画監督今泉浩一とともに『Tri_K』(10~12)など、コラボレーションも多数。
その他に東京国際レズビアン&ゲイ映画祭のディレクター(1996~99)、イギリス実験映画監督デレク・ジャーマンの著書『クロマ』の翻訳(03 アップリンク)、短編映画『KINGYO』(エドモンド楊監督、09ヴェネチア映画祭正式招待作品)に出演するなど、その活動は多岐に渡っている。

WEB http://www.kawaguchitakao.com/



ドラマトゥルク/映像/音響
飯名尚人

映像作家、演出家。舞台とメディアのための組織Dance and Media Japanを設立後、メディアテクノロジーとダンスを中心に、海外からメディアアーティストの招聘プロジェクトを多数行う。プロデューサーとしてアートパーティー「マムシュカ」「国際ダンス映画祭」「ポストシアター」など。
映像作家としての参加は、佐藤信作品『The Sprits Play/霊戯』『リア』、小池博史作品『風の又三郎』『世界会議』、川口隆夫作品『パーフェクトライフ 6』『Touch of the other』他。
脚本・映画監督としての参加は、八戸・南郷でのダンス&コミュニティー映画「鳩祭」「あなたとわたし、ワルツ」「ホームソング」(南郷アートプロジェクト)他。ドラマトゥルクでの参加は、川口隆夫作品「大野一雄について」「パーフェクトライフ 6」他。舞台演出作品として、『ASYL』(西松布咏、寺田みさこ出演)、『熱風』(平野正樹、笛田宇一郎、川口隆夫、ノーラ・チッポムレ)ほか。大野一雄舞踏研究所と共に『大野一雄ビデオアーカイブ』『洋舞インタビュー』のアーカイブシステム構築、撮影、編集を手掛ける。
東京造形大学特任教授、京都精華大学非常勤講師、座・高円寺劇場創造アカデミー講師

WEB http://www.dance-media.com/iina/



照明デザイン/プロデューサー
溝端俊夫

1983年に大野一雄舞踏研究所入所。以来、大野一雄、慶人の国内外の主な活動に制作、照明デザインなどで関わった。1990年代から、大野一雄のアーカイヴ資料を整理し、書籍、ビデオを編集、出版した。1997年に出版した「大野一雄稽古の言葉」(フィルムアート社)は現在まで4カ国語に翻訳されている。また、2007年には大野一雄の百歳を祝うガラ公演「百花繚乱」を企画制作、2010年にはシンガーソングライター、アントニーと大野慶人の共演「Antony and the Ohnos」を実現し高い評価を得た。2004年より横浜都心部の歴史的建造物を活用するプロジェクト、BankART1929の設立に参画、大野一雄フェスティバル、ダンスアーカイヴプロジェクトなどを2016年まで開催した。2017年NPO法人ダンスアーカイヴ構想を設立、日本のダンスアーカイヴ創設と国際ネットワーク構築を目指して活動を続けている。

WEB http://www.kazuoohnodancestudio.com/japanese/

Photo

photo by Bozzo
2013年8月8日 9日 d-倉庫「ダンスがみたい!15」

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マネージメント
溝端俊夫
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川口隆夫
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